私には年の離れた兄が一人いて、中学生の頃、その兄は高校受験の勉強のために、母が家庭教師を雇ったことがあります。
その際よく、母は幼かった私に「の先生が来ると、夕食の準備もそれなりにしないといけないから、手を抜けないし、いつもより勉強が遅くまでかかる日は、何か気の利いた夜食も考えないといけないし、お母さんが一番大変。」とぼやいていたものです。
一介の家庭教師たる相手は、ただの大学生なのですが、なるほど、普段通りの手頃な夕食ではなく、それにさらに花を加えた、豪華に見せたものを食卓に出さないといけないという、母のささやかな見栄心が当時はあったんだなと、今では懐かしく思い出すものです。
そんな母のグチを聞いていた私は、高校受験も大学受験も、家庭教師を必要としない親孝行者だったのですが、今ではふと、自分も家庭教師を頼むような学生で、いつもより豪華な夕食と夜食を口にしたかったと、微笑ましく当時を振り返ることがあります。